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青の扉白の鍵 君の涙は僕への鎮魂歌 −青の扉 白の鍵−
タイトル青の扉 白の鍵 ブランドCyc
定価\8,800 発売日2000/06/09
シナリオみきのゆう/草壁 祭 ジャンル恋愛アドベンチャー
グラフィック如月かん奈 対応OSWindows95/98/2000
プログラムNAYNIT KCALB キーワード純愛 病院 痛い系 王道 手堅い作り
特徴のあるEndingはプレイヤーを選ぶ。システムは安定。ストーリーには現実感があり安易な奇跡は起きない。シナリオで見せることを意識した作品。

あらすじ:
 主人公、庄野 拓己はスポーツトレーナーを目指す大学生。ちょっとした交通事故から入院生活を余儀なくされた彼は、病院で何人かの女性たちと出会います。彼女たちは何かしら夢を抱き、それに向かって報われるとは限らない努力を重ねています。一途な彼女たちに手を貸すうちに、主人公は自らの夢をも再考し始め、ついには目指すべき夢をはっきりと自覚します。が、その矢先に……。
 基本的に悪人はいません。鬼畜や陵辱ももちろんありません。お互いの“夢”を支えあうことでヒロインとの愛を深めていくという典型的な純愛路線です。何だか女性好みのストーリー。
 よくある「悩めるヒロインの救済」に加え、主人公がヒロインに感化されてストーリーが展開することで、既存の図式との差別化を図ろうとしているようです。

システム:
 軽く使いやすく、まことに手堅い作りのシステムです。
 病院内を移動し、女の子と出会ったら会話テーマを選んで会話します。会話のやりとりで好感度が上下します。好感度によって選べる会話テーマが増えます。移動先で出会える女の子は事前にわかるようになっています。
 会話テーマは最大19個。共通テーマと女の子に依存するテーマとがあります。共通テーマでは相手によってやりとりの内容を変えたりすると(ある女の子には犬が好きと言っておいて別の子には嫌いと言う等)好感度が落ちます。嘘をついちゃいけないわけです。何となくときメモチックでした。好感度によって頬を赤らめたりするし。
 下記の通り基本機能はそろっています。ゲーム中、ストレスは全く感じませんでした。
  • メッセージスピード:4段階で設定可。選択肢までのスキップはなし。
  • メッセージ履歴機能:あり。但しconfig.exe(何故?)での「走馬灯」設定が必要。操作はマウススクロールボタン。
  • 画面表示:ウィンドウ/フルスクリーン選択可。
  • 音楽、効果音:スライドつまみで音量を調節可。
  • セーブポイント:48個(私は余りました)。物語中どのタイミングでもセーブ可。
  • その他:CG、シーン鑑賞モード、BGM鑑賞モードあり。音楽はMIDI。
 あの『大戦略』の開発者、たいにゃんさんがプログラムを担当しています。さすがにシステムの完成度はバッチリです。

グラフィック:
 5人の女の子それぞれに3-40枚くらいのCGがあります。全部で160枚。結構多めですか。塗りはとても綺麗です。ハイクォリティと呼んで差し支えないでしょう。個人的には配色がちょっと地味かなと思いますが、萌え狙いでないしっとりした雰囲気のゲームですから、あえてそうしてるのかも。
 原画の如月かん奈さんは同人で有名な人らしいです。クセがなく一般受けしそうな可愛い絵柄はなかなか良いと思います。逆に没個性とも言えますが。
 背景はダメダメです。ラフな筆使いの水彩っぽい絵なんですが、舞台は大病院らしいのに妙に人里離れた田舎の雰囲気を醸してしまってます。どうしてコレを採用したのかよくわからないなあ。経費削減??

キャラクター:
 女の子は病院もの定番の看護婦さん女医さんをはじめ、難病のメガネっ子、楚々としたお嬢様ボーイッシュとこれまた手堅いところを押さえています。既存のヒット作を研究したんだろうな、とか推測したくなります。
  • 庄野 拓己(主人公。名前の変更可能)
     熱血で生真面目な大学生。怪我を機に熱中していたバスケをやめ、スポーツトレーナーを志すようになった。母が画家で、その影響で絵を描いていたこともあるが、母の画風に似てしまうことを嫌悪してやめてしまった。
     悩み方が妙に理屈っぽい人。おふざけもあるので重くはなりませんが、さわやかとは言いがたいかな。感情移入に支障があるほどではないです。

  • 日下部 緋沙子(くさかべ ひさこ)=「口の悪い天才外科医」
     ダイナマイトボディの美女ながらその言動に女らしさは皆無。若い男の子をお嫁(?)にもらって家事全般をやってほしいとか言ったりします。が、いざ仕事のことになると100%集中。普段はスチャラカでもやる時はやるというタイプ。
     こういう言うこととやることが一致しないキャラはツボです。が、ヒジョーにマズイ描写がひとつあって(シナリオの節で後述)、天才外科医としての信用が地に落ちてます。余計なエピソードを入れるなと言いたい。私の緋沙子先生はそんな人じゃないやい(笑)。

  • 橘 史絵(たちばな ふみえ)=「一途な努力家のお嬢様」
     おっとりした外見に反し、激しい情熱を持って目的に向かい、努力する美少女。実は全国レベルの短距離ランナーで、足の怪我の治療のために入院している。選手に復帰するためのリハビリへの努力は壮絶を極める。
     全力で正義を貫こうとする彼女は漂う清潔感が魅力。でも、気丈さばかりが先行して、ちょっと情に欠けてしまったきらいがあります。リハビリシーンのCGは正直、引きました
     自分のことには涙しておいてラストシーンでは涙一滴見せません。それはないんでないかい? と一人つっこんでしまった。

  • 神水流 純(かみずる ますみ)=「無口でボーイッシュな陸上ランナー」
     主人公と同じ大学に通っている。全国レベルの短距離のランナーで、史絵のライバル。不器用な性格。無口。主人公が交通事故を起こすキッカケとなった。家がおもちゃ屋で主人公に毎度、懐かしのおもちゃを見舞いに持ってくる。
     ずいぶん手厳しいことを言う女の子。努力しないと「カッコ悪い」と言われます。が、打ち解けてくると言動が可愛かったりもします。ムキになって努力するところが史絵と被ってるのがちょっとなあ。もっとも、設定は違いますが……。
     ところで、どーしてこんな変な当て字の名前にしたのかな。どうしても「じゅん」と脳内変換してしまった。

  • 高梨 梨帆(たかなし りほ)=「明るく優しい美人の看護婦」
     主人公の担当看護婦。朗らかな性格で患者の人気者。恋愛感情を持たない相手とのお付き合いに抵抗がない。ついでにセックスも? 「付き合ってみなければわからないから」とは彼女の弁。
     妙な無機質さを醸すキャラ。肌のぬくもりや痛みなどの感覚に鈍感(という設定)。感情もとってつけたよう(これは文章力の問題?) が、なぜか不感症ではない(笑)。
     「EVEシリーズ」の法条まりなを目指して挫折したような感じです。痛感に鈍い理由はわからずじまいだし、描写不足の一言につきます。当然、感情移入は不可能でした。メインヒロインだってのに。

  • 志波 なつき(しば なつき)=「小説家を志す難病の少女」
     心優しいが気弱で、人付き合いが苦手な少女。病弱なため学校も休みがちで、内向的な性格に追い討ちをかけている。本が大好きで、病室の壁は本で埋まっている。お父さんのような小説家になるのが夢。
     まず、年齢不詳。学校って高校? でもどーみてもロリ。友達の男の子なんてまるで小学生に見えるんですが、いいのか?
    心優しいとは言っても、それを決定的に印象付けるエピソードはなく、単なる温厚な女の子に留まってしまいました。芯が強いと言っても史絵ほどの気丈さはないし。うーん、中途半端ですねえ。

サウンド:
 音楽そのものはオーソドックスで、まあ平均値です。全部で16曲あります。曲名は「壁に突き当たる」とか、「過去の回想」とか、ありきたりで思い入れを感じません。そんなもんなんでしょうか。
 思いっ切り不満なのがエンディングテーマの処理です。スタッフロールが尽き、ブランド名が出た後、エンディングテーマが途中でぶった切れるんです。どーしてそゆことするよ、たいにゃん?(いや、たいにゃんのせいかどうかは不明) 最後まで聴かせてくれるのが筋じゃないのかよ。それが出来ないならせめてフェードアウト位かけてくれよ。機能は万全でもこーゆー気遣いができんのでは……事務ソフトじゃないんだからさ。
 音声はフルボイスです。声優さんの演技はセリフはともかく、モノローグはド下手。特に緋沙子先生。一番あってて上手だったのは史絵。何にしろ私は全員音声OFFでやりました。
 しかし今のこの業界、下手な演技でも音声をつけなきゃ商売するのは難しいらしい。音声OFFが出来ただけ良かったかな。

難易度:
 難しいというより面倒くさいです。前述の通り女の子との会話では嘘をつかないようにする必要があり、何の質問に何と答えたかメモっておかねばなりません。質問がまたありきたり。「時代小説は好きか」とか「猫が好きか」とか……もうちょいひねったらどうよ? これじゃ攻略もへったくれもないじゃん(苦笑)。
 難易度自体は低めですが、そもそも味わって解く楽しさがないんですから、最初から攻略サイトのお世話になってもいいかも。

シナリオ:
 読みやすくわかりやすく誤字もほとんどなく、文章そのものは平均的水準に達していると思います。それなりに話も練られています。が、引き込まれるほどの魅力があったかといえば、答えはNO。何故なら、とことん心理描写がなってないからです。
 ヒロインと恋に落ちる経過があまりに予定調和。通常なら、何らかのトリガーが示されて、(夢に見たとか悪漢から守ったとか唯一バカにしなかったとかetcetc…)で、相手が特別な存在になっていくんじゃないかと思うんですが、そのトリガーとなるエピソードが本当に希薄。頼むから何となーく恋に落ちないでくださいよ、恋愛アドベンチャーなんだから。
 ヒロイン達は、それぞれ与えられた属性に「強迫観念症かいアンタ」と言いたくなるくらい忠実で頑なです。女の子の心理なんかわかんねーよ知らねーよ、なライター氏の顔が何となく浮かびます。はあ。
 では悪口はここまでにして、イイ!と思った所の話に移ります。何と言っても筆頭は緋沙子のエンディングです。このゲームの全てだと言ってもいいですね。
 緋沙子はアメリカで悪性腫瘍(=ガン?)が再発した主人公のもとに行く事が出来ません。結局、死に目にも遭えず、葬式にも出られず……いつか彼が帰国するのではないかという淡い夢(妄想?)を彼女は胸に抱き続けます。「トレーナーの履歴書に無意識に彼の名前を探してしまう」エピソードが、緋沙子の悲しみや切なさを上手く表現していると思います。
 このゲーム、誰と結ばれても結局、主人公は死を迎える運命にあります。世間では賛否両論(というか批判が多い)でしたが、私はこの特徴を高く評価したいと思います。死ぬか生きるか、ではない。どう生きたか、どう死んだか。肝心なのはそこだというメッセージ性を感じるからです。
 ある日、主人公の後輩だという青年が、彼の手紙を持って緋沙子の元を訪れます。アメリカに行く事が出来なかった彼女は主人公に負い目を感じており、責められるのではないかと内心畏れながら手紙を読みます。が、そこには「自分の生は無駄ではなかった」という言葉がはっきり記されていました。
 彼が最後まで夢をあきらめなかったことは緋沙子に許しを与えたのでしょう。彼女は涙をこぼしながらも、前向きに生きていく──そしてエンドです。
 何故、緋沙子エンドが筆頭かと言えば、他のヒロインには主人公の死に際したギミックが何もないからです。結ばれて、幸せにすごして、だが主人公に忍び寄る病魔の影。というだけなんですね。
 加えて、ヒロインの中で主人公の死に涙したのは緋沙子だけなんです。“涙が溢れてくる”という一文だけなんですが、それが却ってグッときます。この涙がプレイヤーに、自分がヒロインに愛されていたことを実感させる役目を果たしているのではないでしょうか。他のヒロインは悲しみながらも明るく強く生きていく!つう感じで(もちろん明るいのも大切ですが)何か置き去り感がつきまといます。ここは素直に各ヒロインを泣かせたほうが正解だったように思います。
 そんな素敵な緋沙子シナリオなのに、あの外科部長どうたら言うエピソードは何です? 繰り返し出てくる“緋沙子先生は信用できる”のセリフが空々しくなるだけでしょうが。私は不潔ささえ感じました。
 エロを濃くしようとしたんでしょうが、不条理なエピソードはプレイヤーのエロどころか怒りを沸き立たせるだけです。私の中で外科部長エピソードはなかったことになっています。

お気に入りキャラ:
  • 日下部 緋沙子
     当然ながら緋沙子。キリっとした姿の合間にふと見せる表情が可愛いのがナイス。初エッチの展開はもうちょっと何とかならんのか(あれじゃ色情狂)。ああっ、自分でシナリオを書き直したいっ!(笑)
  • 橘 史絵
     再発の危険を抱えていながら彼女のトレーニングを第一に考える主人公に「どうしてそこでわたくしのトレーニングの話が?!」と突っ込むところが可愛いっ! でも、もうちょっと繊細さも描いて欲しかったな。
総評:
 手堅くまとめた設定、安定したシステム、可愛いCGに平均以上の文章と名作になる条件は全てそろっているのに、今ひとつ踏み込みが足りなかったのが残念。振り返ってみるとどうも作りがサラリーマンくさいんだよね。無難な仕事の仕方はやめて、もっと冒険して危険な橋を渡ってみろ! とCycのスタッフにはエールを送りたいと思います。
 とは言え、色々と批判もしましたが、面白かったです、このゲーム。実はアキバの祖父地図で\1,780(初回特典ポストカード付)で売っているのを入手したんですが、元を取って余りある内容でした。
 純愛系が好きな人、例え辛くても現実を受け止めることを潔しとする人は是非プレイしてみてください。えろえろはまあ程々には楽しめるでしょう。\3,000くらいならGetしてもお得感を味わえるものと思います。
 得点は下の通りつけさせてもらいました。

シナリオ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◇ ◇ ◇ ◇ 65点
キャラクター ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◇ ◇ ◇ ◇ 60点
システム ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◇ ◇ 80点
グラフィック ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◇ ◇ ◇ 75点
サウンド ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◇ ◇ ◇ ◇ 60点
総合評価 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◇ ◇ ◇ 70点(良作レベル)

地雷=0-29点 駄作=30-49点 普通=50-69点 良作=70-89点 名作=90-100点
プレイする意義があるかどうかは60点を、満足できるかどうかは80点をボーダーラインとしています。

《了》 (2003.9.15公開)
文責:◆PinkCH/F76 mail:memphis@s5.xrea.com