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アトラク=ナクア〜ATLACH=NACHA〜
『アトラク=ナクア〜ATLACH=NACHA〜』
 ねえ、ここにおいでなさいな。淫らな、肉の人形にしてあげる…
主人公・初音は、宿敵との戦いで深手を負った女郎蜘蛛。いつか来る再戦の時に備えて、傷を癒し、ちからを蓄えなくてはならない。初音のちからの源は人間の血肉と精気である。初音は贄を求めて山を降り、とある学校に結界を張って潜り込む事にした。
(パッケージ裏より引用)


総合:B シナリオ:A キャラ:B CG:D エロ:D 音楽:B システム:D

 実はあんまりアリスソフトには食指が動かないタチなのだが、本作は安いことと作業ゲーじゃないこと、加えて名作の呼び名が高かったので一般教養(?)と思って購入した。プレイ後の感想としては、まあやはり古いわな……。

総括
 とにかく古いゲーム。だって1997年末発売だよ? プレイしてて「痕」思い出したんだけど、年代といいゲームの雰囲気といい、非常に似ているんだなあ。…いや古いのは承知の上でプレイしたんだけどね。
 で、一番の特徴として挙げられるのはシナリオ&テキストの秀逸さ。テキストそのものから凄惨かつ妖艶な雰囲気が匂い立っているのね。テキストが読者に対して明確なイメージを提示し、それを読み取らせる機能をしっかりと果たしている。なんだかCGが添え物に感じられるほどだった。ライター氏の頭の中には「情景」がはっきり見えているんだろうなあ。話の筋も章立てになっていながらも、各章を貫く時系列が破綻なく描かれていてよい。冒頭〜かなこの章までの、かなこの心の移り変わりなんてのも丁寧に描き出されていてナイスだった。NTRとか全く意識しない鷹弘や和久の存在もいいスパイスになってたし。古き善き時代とはこういうことを言うのかな。本当、こういうシナリオ&テキストは久しぶり。
 難を言えば短いってことだけど、コンパクトなのも時には美徳だろう、つうことでさほど大きな問題ではなかったな。まっこと、美味しゅうございました。

 キャラクターとして本作のイチオシは初音姉様…と言いたいところなんだけど、ちまたで言われているほど姉様には魅了されなかった自分でした。なんつーか、あまりにも最強・全能・都合良過ぎでない?彼女。ライター氏のストーリーを操るための便利な道具状態だった気がするな。例えば猪口先生とのやり取りなんて、全くのところ生徒の仮面を被る気もないんじゃん。生徒であるが故に嫌な先生に嫌な思いをさせられるってとても日常的で、共感を得るにはGoodなエピソードだったはずなのに、あのやり取りじゃ感情移入もへったくれもなかった。猪口の嫌がらせを甘んじて受け止めるとか、この世の理に従わざるを得ない姉様というのも見たかったんだが。…まあ、これは自分の個人的な嗜好かなあ。
 ということで、この作品での自分的イチオシキャラはかなこ。描かれるスパンが長く、描写が多いと言う意味でも有利だね。おどおどびくびくした気弱な冴えない娘のはずなのに、和久というキャラが彼女の魅力(めちゃめちゃ可愛いがりたいとか放っておけないとか)を上手く引き出していて、プレイヤーまでがかなこを愛おしく思えるようになるのが素晴らしい。沙千保と鷹弘のカップルよりも相乗効果が高いのは、かなこがレイプという辛い過去を背負っているからだろう。お嬢様で、不良の和久とは幸せになれそうもない薄幸さもいいねえ(笑)。いや、様々なベクトルの要素が複雑に絡ませてあるキャラってやっぱ最高っすよ。

 絵は…古いです(それはもう言ったw)。いつものアリスのおにぎりくん絵ですな。塗りが粗いんだけど、そこについてはこの作品の雰囲気にはまっていて結果オーライかと。絵自体が古いのも、まあしょうがないんじゃない、で済ませられるレベルだった。問題は枚数だな。足りなさ過ぎっしょ。前述の通りテキストがかなり読ませるので雰囲気には浸れるんだけど、「ここは欲しいでしょ!」って個所で絵がないのはやっぱマイナスだわな。エロについても絵の使い回しが目立つし、差分もないし。加えて声もない。期待する方がどうかしてるんだろうけど、本作で抜こうなんて考えないほうがいいでしょうな。

 音楽はShade氏。BGMは全部で15曲でヴォーカル曲はなし。ホントどの曲も秀曲ですよ。人気の高いアトラク三部作はもちろんのこと、他の曲もツボを押してくるかなりの出来。自分のお気に入りはWeeping Causeかな。戦闘系の曲もいいんだけど、心情を歌っている(んじゃないかと思う)曲にハマリがちな今日この頃。年かね…。

 本作のポイントはなんと言ってもお話。絵や音楽やキャラやなんかが上手にそれを引き立てていて、まさに珠玉の一作と言えましょう。つうことで、お話を楽しみたい人にはオススメ。が、オレは抜きてーんだ文句あっか畜生、な人には全くオススメできませんな。また、最近の大ボリューム+大仕掛けな萌えゲーをやり慣れている人には物足りなく思えるでしょうねえ。ただ、こういう味わいのゲームが最近枯渇してきているのも確かで、初心者ゲーマーがそれを残念なこと、と捕らえてくれるのならそれは悪くないことだろうと。とりあえず自分はこのゲームに出会えて本当に幸運だったな、と思いますわ。

《Written 2009.2.23》
文責:◆PinkCH/F76 mail:memphis@s5.xrea.com