ルート√324 Topへ戻る

H2O
『H2O』
限りない透明。この小さな透明を永遠に重ねていく……。
重ねた透明は徐々に青に変わっていく。
ここから見える空……そしてここから見える海。
その色は彼の心の中でいまだ色あせない。
(パッケージ裏より引用)


総合:D− シナリオ:E キャラ:D CG:C エロ:D 音楽・声:C システム:C

あらすじ:
盲目の少年、弘瀬琢磨(主人公)が預けられた村。そこは都会とは隔絶した、独自のルールを持つ場所だった。
クラスメイトにいじめられ、教師からも無視の扱いを受ける小日向はやみ。村長の娘でおっとりした中にも影を漂わせる神楽ひなた。そして、琢磨以外の誰にも見えない「時の音の妖精」音羽。彼女らと触れ合いながら、彼は村のルールと相対してゆくが…。

シナリオ:E
選択肢もあるにはあるが、ストーリーは1本道と言っていい作り。さらに、ネタバレの都合上キャラの攻略順序が制限されており、プレイの自由度は低め。まあ、周回を重ねるごとに少しずつ全体像が見えるような工夫はされてるけどね。
テキストはクセの強い装飾過多な文体。ただ、某きのこみたいな大仰な装飾じゃなくて、謎かけみたいな、仏映画みたいな回りくどい言い回しをわざとやってるって感じ。これはこれでいいと思うけれどいかんせん、時折はさまるコミカルなシーンとの食い合わせが非常に悪い。本作のギャグで一個所も笑えなかった身としては、無理せんと前衛芸術どっぷりな世界を描いた方が良かったんちゃうかライター氏? てなところ。自分はケロQのゲームは未体験なのだが、終ノ空あたりをプレイすればこのライター本来の持ち味を楽しめるのだろうか。
ストーリーは序盤、はやみの差別問題で話に引き込み、はやみ自宅襲撃〜問題解決の個所あたりがクライマックスになっている。テーマ自体は大変ヘビーで、何故エロゲで敢えてやるのかが自分の最大の興味だったのだが、結論としては単なる「掴み」のギミックに使われただけ。DQN節でもいいからメッセージ性の片鱗でもあればまだ納得できたのになあ。まあ、はやみの萌えのギミックにもなってるからいいのか…?(本当にいいのかよ???)

キャラ:D
シナリオが空中分解してる割にはキャラはなかなかしっかり立っている。ただ、本作のテーマを考えるとメインヒロインははやみなのだろうが、最終的に真ヒロインは音羽みたいにも受け取れてしまい、各ヒロインの役割が明確になってない感じがした。ここらは構成のgdgdさが現れてしまったね。ちょっとの工夫で回避できそうなのに惜しい。
個人的インプレッションははやみ>音羽>>>>>ひなた。ひなた(=ほたる)のキャラ造形が今ひとつだった。主人公を持ち上げるわざとらしさが鼻につくし、〜様とか呼ばれるのもなんか嫌味でなあ。やっぱ前述の萌えのギミックのせいで、はやみが一番好印象だったな。

CG:C
枚数は126枚。ただし、落書k(ryコミカルなCGが34枚含まれており、いわゆるイベントの1枚絵の量としては平均レベルってとこ。
絵柄は複数ゲンガーなのが信じられないほど統一が取れていて、且つどの娘も可愛らしく、良く映える萌え絵と言える。
だが、全体的にモノトーン寄りのやや渋い色調になっていて「ただの萌え絵じゃねーんだよ」みたいなゲンガー達の気概?を感じた。気のせいかもしれんけど。
画面の色味が渋いのは別にいいんだけど、デザイン的に各ヒロインに際立った特長がないため、ポイントがあやふやっつうか、どの娘に萌えていいんだかわからん、てな状況を作り出してるのも事実。唯一、視覚に訴えるヒロインははまじだと思う。錠前とか、実は男なのにスク水とか。ばっさり髪を切っちゃうのも良いね。
背景は秀逸。特に踏み切りシーンの赤と紺の風景は琢磨の心情をよく伝えていてGJ。赤と青の組み合わせが上手く、他にも夕焼けとか月夜とか海とか見ごたえがある。どうも猟奇的な雰囲気が得意そうだね、ここのビジュアルスタッフ。

エロ:D
回想は13枠だが、枠数では語れないほどにエロは薄い。エロシーン自体、はやみ差別問題より数年後の後日談的な扱いになっていて感情移入にも無理があるし、エロ補完目的と思われる「ATO−GAME」は所詮おまけだし。つか、シナリオ的にアレなおまけをつけられてもな。ATO−GAMEで得をしたのはゆいだけってな気がするんですが。
はやみと結ばれるにあたって、例の差別問題を絡めなかったのは故意なのだろうか。やりようによってはかなり威力を発揮する設定なんだがなあ。(俺って鬼畜?)

音楽・声:C
BGMは28曲、ヴォーカルはOP1曲、ED1曲(但し3バリエーションあり)、真ED曲(?)1曲 。特典サントラがショートだったのにはムッとしました、ええw
BGMはアコギとかピアノとか、アコースティックっぽい編成の曲が多い。曲調も爽やかで素朴な雰囲気で、作品のイメージ付けに威力を発揮してると思う。ヴォーカル曲もいいね。前述の通り、なんだか重たいイメージのビジュアルを和らげてる。
声はキャスティングも演技もGOODですよ。特にはやみの中の人いいわ。

システム:C
単純なノベルゲーゆえ、ややこしい機能は不要であり、ごく普通のシステムで及第点。既読スキップ、バックログ、オートなど一般的な機能はすべて揃っている。システム画面はシンプルでとっつきやすく、良いと思う。時々BGMの再生にトチるのはちょい閉口したけど。
それから本作、文章が画面全体を覆うように表示されるタイプなのだが、薄いグレーの下敷き(?)が絵にかぶってしまい、見えにくい。ちょっともどかしかった。
主人公が盲目のためBlindnessモードが用意されているが、これ、画面が白黒になってしまうっつー代物。自分にとっては無用の長物だったわ。

総合:D−
新興ブランドとは言いつつ、ある程度の実績を持つスタッフが揃っているし、確かに平均点はクリアしてる。けれど、どうもまとまりがない作品だな、と感じた。すごく尖がった持ち味を感じるのに、テーマの追求はついてきていないし、ギャグシーンは持ち味を殺してるし、萌えゲにしては変に斜に構えた空気が作品中に流れてるし…それぞれの要素のベクトルがあっちゃこっちゃ他所を向きすぎでないかい?
シナリオについては苦言を呈したけれど、パワーを感じなかったわけじゃない。(たぶんライター氏の得意技と思われる)鬱とか泣きとかデカダンとかにユーザを引きずり込む吸引力をもっと生かしていれば、もうちょい違った感想になっていたと思うよ、うん。

《Written 2006.10.17》
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