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さよならを教えて
『さよならを教えて』
さよなら…。今、全ての人に贈る最期の言葉。
間を見失い、すべてに逡巡し、自分の事さえも分からない男(プレイヤー)は、悪夢と白昼夢に悩まされながら、教育実習生としての責務を全うしつつ、迷い子のように橙色の放課後を彷徨い続ける。
校内で出会う少女達にやすらぎを求め、同僚の女性たちの顔色を伺う毎日。彼と彼以外の間にあるのは深く暗い奈落だけだった。彼はそこに転がり落ちるしかないのかも知れない。そう、昼の次にやって来るのが夜でしかないように、人間が不眠不休で起き続けられないように、人が空を飛べないように、1+1が2であるように、少女が女へと成長するように、……至極当たり前のように。
正気と狂気の狭間を越えた時、貴方が目撃する結末とは……!?
(パッケージ裏より引用)

総合:C+ シナリオ:B キャラ:C+ CG:C+ エロ:C システム:D 音楽・声:B+

一時期、電波ゲーが犯りたくてたまらなかった時期があり、見つけた時が買い時とばかりに色々バカスカ買い込んでいた。そのうちの1本がこれ。意気地と時間がなくて結局、ほとんど積んでるけどね。

あらすじ:
教育実習生の人見広介(主人公)は天使と怪物の妄想に悩まされていた。夕暮れの 学校を彷徨いつつ、彼は教え子の少女たちに様々なイメージ──自らの精神世界の ──を投影する。橙色の世界で白い天使に怯え、黒い怪物に追い詰められ、その果て に人見が流れ着いた世界とは……。

シナリオ:B
テキスト自体は平凡な味わい。表現もありきたりのベタベタで、ただわかりやすく整形 されているってことだけが取り得だと、序盤はそう思った。そのわかりやすい文章が読み進めるうちに、わかりやすく意味不明になっていく。例の有名な「畏敬する天使さま」発言辺りで、ああ、コレがキ○ガイかぁ、なんて変な感慨を持った。平坦な文章で表現される“有り得ない思考”ってものがこんなにキティっぽさを訴えるとは思わなんだ。ここらの効果はとても面白かったですよ。
SSDの手足バラバラとかはまごうかたなき妄想で、しかもプレイヤーは第三者としてそれ を見せられてたから「あー、はいはい」みたいな冷めがあった(それが一種の魅力なんだけどさ)。けど本作は少女の手足をもぎながらも「これ現実? 妄想だよね? え、どっち?」てな具合に主人公自身がふわふわ境界線を漂っている。そんな主人公にシンクロしたら最後、プレイヤー自身もじりっ、じりっと狂気の泥沼に引き込まれていくしかない。その感覚が怖くもあり、味あわずにいられなくもあり。効果は人にもよるだろうけど、多大な洗脳パワーを持つシナリオだと思いますわ。自分は文章のリズムに弱いので(キティ効果を高めるためであろう)同じ文言を繰り返す技法がキモに入ってしまい少々ヤヴァかったっすよ。「辛いこともあるのだろう。寂しいこともあるのだろう。」あうあうあうあうあああぁぁぁ長岡やめてーーー!w
どのヒロインも話の筋はほぼ同じでENDも同じ。各ヒロインの持ち味を生かして微妙に終盤の説明テキストを変えてるのが涙ぐましいが、ラスト一本道はいただけないな。 オチの弱さを感じてしまった。明確な希望ENDは無理にしても、絶望END(完全に彼岸に逝っちゃうとか)が終幕として見たかったよ。まあ電波の表現としては悪くなかったのでこの評価で。

キャラ:C+
睦月以外のヒロインは主人公の脳内カノジョな訳だが、どの娘もちゃんとキャラが立っている。元の素材(?)を彷彿とさせる性格付けなのがありがちながらもGJ。どの娘も主人公に“擦り寄る”“懐く”あたり、キ○ガイの手前勝手な脳内カノジョを感じさせてまたまたGJ。特にまひるはその凄惨な過去がキャラに直結していて非常にインパクトが 大きい。彼女に「ふにゃあっ!」なんて言われた日には……。しかも翌日、ヘーキな顔で「おにーちゃんっ」なんて声をかけてくるし。ああ、痛々しいよまひる。
ヒロインたちは少女の姿でのみ画面に現れ、元の姿(ネタバレ自主規制)はビジュアルでは示されない。これも意図してのことだろうけど“ビニールのような足”なんてな表現に凄く想像を掻き立てられた身としては、やっぱ絵が欲しかったわ。
脳内カノジョ以外にも二人の大人の女性が登場するが、主人公のこの二人への敵対心、猜疑心がハンパない。身体を重ねる描写はあるけど、心は一切交わってないんだよね。言葉をお互いにかわしても心に染み込まず素通りばかり……。彼女らは“他者”に終始した、てなところか。友好的な現実への接点として存在し得たのは睦月だけで、その接点の見え方もてんでサイコさん視点だし。らしいっちゃらしいんだけどさ。
まあ、このゲーム、一番キャラ立ちが良いのは主人公なんだけどねw

CG:C+
合計83枚、但し立ち絵を含む。全CGに夕暮れの橙色フィルターがかかっており、退廃的、刹那的な雰囲気を醸し出すのに成功している。死体などのグロ絵は奥行きのない真っ白な背景で、キャラや血や臓物が浮かびあがり、尚且つ静謐な空気感が出ていて個人的にイイと思った。美麗にして醜悪なグラフィックです、確かに。
一枚絵を流用し、絵の一部を拡大表示して見せたりスクロールして見せたりと、枚数節約的な使い方が目立つが、演出として効果を上げていたので良し。絵柄はさすがに古いが、長岡氏独特の極端な垂れ目が尋常でない目つきを感じさせていたのが良かった。自分は「雫」の水無月絵を思い出しましたよ。(あれより上手いけどな)
塗りは、橙色一辺倒でべったりになってしまいそうなのが、上手く陰影をつけて味わい深い表現になっていたのが良い。つうか、素晴らしい。特に素肌はなんとも言えずエロい。表現、演出という意味で好印象です。

エロ:C
回想は20枠。全てが人を選ぶエロですな。決して薄くはなく、むしろ濃いと言ってもいいんだが、自分はまったくさっぱり使えまへん、な人だった。
女の子の恥らう表情とか身を預けてくるいじらしさとか精神的なつながりとか、そんなものは一切ない。エロは全て主人公の脳内産物なので、彼がその気になったら唐突に犯ります。シチュは異常としか言いようがない。セックスってこんなに死と隣り合わせだったんだね、みたいな。基本的に暴力とセットになってるからなあ。カラシとか手足もぎとか頭打ち付けとか緊縛雨ざらしとかな。
この作品のエロが使えるっていう人は、他にオカズがなくて困るんじゃないか、なんて無用な心配をしてしまいそうになる。そんなキ○ガイエロを堪能したいなら期待していい。
自分としては実用性というより、主人公の性の原体験や狂気にはまるギミックとしてのエロの用い方が面白かったので、そういう意味で評価した。

システム:D
画面全体をテキストが覆う、いわゆるビジュアルノベル方式。エンジンはVAのREALLIVEで、Save/Loadはもちろん既読スキップ、既読の読み返し等の基本的機能は備えている。何分古いゲームなので仕方ないのだがオートが無かったのが不便だったな。それと、プレイ中に何度かハングしたのもマイナス。必ずOS(Win98SE使用)を巻き込んだので環境にも問題があったのかも知れんけど。
回想、CG参照、Musicモードも完備。話はやや外れるけど、メニュー画面のデザインがなかなかイカレて、いや、イカしてて良かった。ここら辺はチョーケンがやったんだろうなあ。

音楽・声:B+
BGM13曲、ED1曲(ヴォーカル付き)、合計14曲。さっぽろももこさんとI've(EDのみ)が担当している。一言で言って素晴らしい出来だね。
このゲームの雰囲気は夕暮れフィルターのCGと音楽の2本柱で成り立ってるんではないかな。BGMはどれも秀曲ぞろいで、とにかく中毒性が強い。聴いてると実際、気が違いそうになるんだが、聞こえなくなるとどうにも物足りなくなるというか。
個人的に中毒になったのは「逆行天使」と「流れとよどみ」。ED曲は歌詞に含まれる単語が気になってつい聞き入ってしまうタイプで結構ヘビロテしてたのだが、さよ教過去スレで曲中の仏語の呟きが呪詛ならしいと知って(((;゚Д゚))) ガクガクブルブル そんなトコまで凝らないでホスイです。
EDはI'veのアルバムで入手できるが、サントラはまず入手不可なのが痛い。もっとも、ゲームDiskにwaveファイルが素で入っている(但しボリュームレベルが異様に低い)のでそれで我慢する手もあるけど……この曲達が埋もれるとはもったいない話だわ。
そして、声の演技がまた(゚∀゚)イイ!! んですよ。特にとなえ。涼森ちさとさんってスゲエ演技力ですな。睦月(佐々木あかりさん)も透明感のある声がぴったりだし。だが、このゲームで棒読みの素人声優がヒロインを演じたらどんな効果が生まれただろうか。それはそれで震撼したりして…などと想像するのも、本作品の楽しみ方のひとつだ罠。

総合:C+
電波ゲーってこういうのを言うんだな、と素直に納得できた。正に電波のお手本のような作品だと思う。主人公の狂気が日ごとに深まっていく訳だが、その描写はゲームの最初から最後まで、総じて正気なんだよね(当たり前か)。まあ、描写や表現までもがイカレてるってな前衛的な作りの作品(バグゲー・クソゲーとも言う)が実際に存在するのが困ったところだけど。
プレイヤーを引き込む演出や雰囲気作りは相当高度だったし、現実と妄想の境界線の曖昧さを前面に押し出したシナリオにはホント、惹き付けられた。でも、テーマがテーマなだけに、単なるキ○ガイの記録では終わらない、何かが残るような作品であって欲しかったように思う。哀れさとか無常とか運命とか、なにかそんなモンがね。
最後に蛇足だけれど、「さよ教設定集」速攻で注文しますた。こーゆーのは思い立ったら在庫があるうちに行動すべきだよな。

《Written 2007.07.18》
文責:◆PinkCH/F76 mail:memphis@s5.xrea.com